プラズマ・壁相互作用(PWI)の総合的理解は核融合炉実現のための重要な課題であり、この理解を深めるためにはPWI計測が必要不可欠である。このために、分光学的手法を用いた壁表面改質の実時間計測法の技術と"Switchable Mirror"の原理を適用して、水素透過測定及び光反射率測定が可能な水素リテンション実時間計測システムの設計・製作を行った。このシステムへの適用のために、厚さ100μmのタングステン基板及びニッケル基板に対して、厚さ約280nmのイットリウム薄膜を蒸着後に厚さ約20nmのパラジウム薄膜を蒸着させた試料を作成した。この薄膜付基板を約50mTorrの水素雰囲気に晒すことにより、波長555nmの光反射率(角度=75度)が約3%減少すること、また、水素の導入に対して光反射率が可逆的に変化することが明らかとなり、水素リテンション実時間計測に適用可能であることが確認できた。さらに、タングステンに重水素プラズマを照射し、その後に昇温脱離法を用いてタングステンの水素吸蔵特性を把握した。タングステンの表面温度が約500Kでのプラズマ照射の場合には、タングステンからの水素放出はほぼ室温から700Kの範囲であり、その放出ピークは約580Kであった。これに対して表面温度約660Kでのプラズマ照射の場合には、600K~1000Kの範囲で水素放出があり、放出ピークは約880Kとなることが明らかとなった。これは、タングステンの温度上昇にともない、新たな水素捕捉サイトがタングステン中に生成されていることを示唆していると考えられる。
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