蒸留装置は化学産業における主要な分離装置として多用されている一方、液の蒸発のために大量のエネルギーを費やしている。本研究では圧力分布を利用した蒸留装置を開発し、従来型蒸留装置に対するその省エネルギー効果を明らかにすることを目的としている。本年度はプロセスシミュレータを用いた検討を一層進展させ、蒸留の条件が省エネルギー性に与える効果を検討した。前年度までは水-メタノール系を中心とした検討を進めてきたが、本年度はベンゼン-エチルベンゼン系も対象に加えた。その結果、対象とする系の相対揮発度によらず、提案する圧力を利用した蒸留装置において大幅なエネルギー削減効果が得られる可能性が示された。さらに、供給する液の組成などの条件が省エネルギー性能に与える影響について検討を進めた。その結果、これらの条件によって省エネルギー効果は影響を受けるものの、検討した全ての条件において、少なくとも30~40%の省エネルギー化が可能であることが示唆された。一方で、本年度は実証実験のための装置のハードウェア設計についての検討を行った。従来の蒸留装置とは異なり、提案法では各段を個別の容器とし、それぞれをポンプなどの送液装置で連結する必要がある。本年度は圧力ゲージや液面計、ポンプを組み込んだ1段分の装置を設計し、実際に試作を行った。実験によってその機能を検討したところ、基本的な動作に問題のないことを確認することができた。この装置を多数作製して互いに接続することで、提案法による蒸留を実現できると期待される。
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