茶園においてチャハマキと同所的に生息している多種鱗翅目昆虫がオス殺しウイルスを保有している可能性について、オス殺しウイルス特異的RNA配列をもとにしたプライマー2種(A1およびC3、A1増幅断片:300b、C3増幅断片:400b)を用い、RT-PCRにより調査した。 平成21年9月、鹿児島県枕崎市で採集されたチャノホソガ(Caloptillia theivora)40個体についてオス殺しウイルスの有無を調査した結果、調査した全40個体からA1配列は全く検出されなかったが、C3配列は100%検出された。その後配列を特定するためにチャノハマキホソガのC3PCR増幅断片をシーケンスしたところ、オス殺しウイルスとの相同性はなかったため、チャノハマキホソガにおいてC3増幅断片が検出されたのはプライマーの非特異性によるものであることが示唆された。さらに、生物検定により、チャノハマキホソガがオス殺しウイルスを保有しオス殺しを誘導する可能性について、別の30個体を用いて調査した。チャハマキにチャノハマキホソガ磨砕液を注射接種し、注射接種当世代および次世代にオス殺しが見られるか調査した結果、調査した30頭ともチャハマキに対するオス殺しを引き起こすことはできず、性比の偏りもみられなかった。 平成22年2月に宮崎県三股町で採集されたウスコカクモンハマキ(Adoxophyes dubia)2個体及び鹿児島県枕崎市で採集されたビロウドハマキ(Cerace xanthocosma)16個体についても同様にオス殺しウイルス特異的配列の有無をRT-PCRを用いて調査したが、増幅は見られなかったため、オス殺しウイルスを保有していないことが示唆された。
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