前年度に引き続き、茶園に生息するハマキガ類におけるオス殺しウイルスを保有している可能性について、オス殺しウイルス特異的RNA配列をもとにしたプライマー2種(A1およびC3、A1増幅断片:300b、C3増幅断片:400b)を用い、RT-PCRにより調査したが、採集したチャノコカクモンハマキ、ビロードハマキではオス殺しウイルスを保持している個体は発見できなかった。 そこで、チャハマキと系統的類縁度の異なる3種のハマキガ科昆虫(チャノコカクモンハマキ:Adoxophyes honmai、Homona eductana、チビカクモンハマキ:Archips insulana)を供試して、本ウイルスの交差感染性の有無を調査した。チャノコカクモンハマキ、H.eductanaおよびチビカクモンハマキの4齢幼虫に本ウイルスを注射接種したところ、オス幼虫と蛹の死亡率は、それぞれ0%、97%および29%で、メス成虫の感染率は、それぞれ12.5%、77.8%および86.8%であった。本ウイルス接種後、感染したメス成虫から次世代のメス成虫へのウイルス伝播率(垂直伝播率)を調査した結果、垂直伝播率はチャハマキでは100%であったのに対して、H.eductanaでは33%、チビカクモンハマキ、チャノコカクモンハマキでは0%であった。このことから、オス殺しウイルスの垂直伝播率は、チャハマキの類縁関係との関連性が示唆された。さらに、オス殺しウイルスに感染したH.eductanaを累代飼育したところ、H.eductanaにおいても、オス殺しウイルスの垂直伝播率が0%となった。以上から、オス殺しウイルスは、チャハマキに特異的に感染するウイルスであることが示唆された。
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