研究概要 |
本研究は,ハナバチ上科の単独性コハナバチにおいて「働きバチ」を人為的に育成することにより,社会性昆虫の最大の特徴である「カストシステム」の起源を明らかにすることを目的としている。当該年度は,島根大学構内の温室に地中営巣性ハナバチ飼育用の巣床(ビーベッド)を設営し,主要な研究材料であるフタモンカタコハナバチ(以下,フタモン)の飼養を試みた.フタモンのように地中に営巣するハナバチ類は,営巣土壌条件の選択性が高いことなどから,人工環境下での飼養が極めて困難であるが,当該年度の成果により施設内で実験個体群を通年維持するために必要な技術を確立することができた.これにより次年度は,より簡便な方法で個体群を維持することが可能となった. コハナバチ類にみられる原始的な真社会性(母娘共存型カスト社会)では,働きバチカストに属する娘バチの体サイズが,母バチよりも小さい傾向にある.本研究では,単独性種であるフタモンにおいて,育房内の幼虫餌量を調整する実験操作によって,人為的に小型メスを育成することを計画している.いわゆる一括給餌を行うコハナバチ類では母バチの育子期間中に操作を行わねばならず,しかも地中営巣性種であることから,通常の飼養環境では実現できない方法である.このことを可能とするため,当該年度は特殊な「人工巣」を開発し,これを用いて試験的にハチを飼養した.当初の計画通り,当該年度は小型メスを育成することは行わなかったが,実験的操作に伴う技術的な問題点を明らかにすることができた.
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