植物の根は、栄養塩吸収や植物体の支持などに欠かせない器官である。その機能を遂行するために、重力屈性、水分屈性、接触応答など様々な環境感覚能を持っている。根が、重力や水などを認識してその方向に成長方向を変えることや、あるいは根の先端が接触刺激に極めて敏感なこと、環境によって、根系構築が様々に変化することは良く知られている。本研究は、植物の根が示す感覚器官としての機能を、これまで知られていなかった障害物認識および栄養塩等化学物質探索能について検討し、その感覚能の実体、感覚能を支える生理過程、感覚能に働く分子機構を明らかにすることを目指すものである。 本年度は、実験系の確立のために、培地支持体の確定、培養条件の検討などを主に行った。障害物認識機構には、根が作りだす電場が重要な役割を果たすと想定されていたので、固形化に二価イオンを必要とするゲランガムから寒天に培地支持体を変え、また栄養塩濃度をどこまで減少させることが可能かについて検討を行った。多くの実験例において、根の伸長方向に対して、そこに存在する物体の配置が障害物回避を引き起こすのに重要なことが明らかになった。 また、リン酸栄養塩の不均等分布がどのような影響を及ぼすかを明らかにするために、リン酸欠乏培地の一部にだけ、リン酸濃度の高い状況を作り出すことに成功した。側根の形成が、リン酸濃度に依存して引き起こされる可能性が明らかになった。 シロイヌナズナ根系の成長連続観察のための実験系を新しくすることで、より簡潔に観察が行えるようにした。
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