これまで超長鎖脂肪酸合成酵素をコードするPAS2遺伝子に注目して、主にそのシロイヌナズナ変異体を利用して細胞増殖と超長鎖脂肪酸との関連性を解析してきた。平成21年度は新たに超長鎖脂肪酸合成の阻害剤であるカフェンストロールを利用することにより、past変異体で見られた表現型を再現できることを明らかにした。つまりカフェンストロール投与により、組織内層において細胞増殖が活性化すること、またA型レスポンスレギュレーターであるARR6遺伝子の発現が上昇することを見出した。これらの結果からサイトカイニンが関与していることが考えられたため、pas2変異体およびカフェンストロール処理した野生型植物体で植物ホルモンの定量を行ったところ、サイトカイニン量が顕著に増大していることが明らかとなった。また、ブラシノライドやジベレリンの量的変化も観察された。サイトカイニンが最も顕著な変動を示したため、サイトカイニン合成酵素であるIPT3遺伝子の発現をGUSレポーター遺伝子を用いて解析した結果、この遺伝子発現も有為に増加していることが示された。以上の結果より、超長鎖脂肪酸由来の何らかのシグナルが下流でサイトカイニン合成を制御し、細胞増殖を抑制していることが強く示唆された。今後は、これらの結果を踏まえて、内生のサイトカイニン量を減少させた際にpas2変異体の表現型は抑圧されるかどうか調べる予定である。
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