研究概要 |
赤色光・遠赤色光の受容体であるフィトクロムBの遺伝子(PHYB)に変異があるミヤコグサの変異体phyBを単離した。phyB変異体は野生型と比較してクロロフィル含量が低く、徒長の表現型を示した。さらにphyB変異体を白色光下で生育させると菌接種後28日での根粒数が野生型MG20と比較して有意に少なくなった。そこで光合成器官を発達させるため一定期間白色光下で生育させたMG20とphyB変異体を用いて、赤色光(R)の光量子速度を一定にし、遠赤色光(FR)の値を増減させて根粒着生試験を行ったところ、低R/FR条件(R/FR=0.1)でも根粒数が減少した。また、この時の根におけるスクロース含量は低R/FR条件下の方が高かったことから、根粒着生がR/FR比受容反応であることが示唆されている。 そこで、各光条件下における植物ホルモンの濃度を解析したところ、白色光下のphyB変異体及び低R/FR区の植物で同様の挙動を示しているものはジャスモン酸(JA)だけであった。植物ホルモンの濃度は低R/FR区では菌接種後0日、7日、14日、白色光区では菌接種後0日、7日、21日で経時的に測定したが、JA濃度は菌接種後7日で白色光下のphyB変異体及び低R/FR区においてコントロールに比べ低い値を示した。これらの結果から、これまで根粒形成を抑制すると考えられていたJAが逆に根粒形成を促進させる可能性が考えられた。そこでMG20を0.1,1または10μMのJAで処理し、JAが根粒着生に及ぼす影響について解析した。その結果、これまでの報告と同様にJA濃度が高くなるに従って植物の生育は阻害されたが、0.1,1μMのJA処理では生育が阻害されたにも関わらず、根粒数は増加した。しかし10μMのJA処理では根粒数も減少していた。これらの結果から、JAは低濃度では根粒形成を促進し、R/FR比に応答して根粒形成を制御している物質のひとつである可能性が示唆された。
|