研究概要 |
ミヤコグサのphyB変異体は,野性型ミヤコグサMG20よりも根粒数が少ない.また光合成器官を発達させるため,一定期間白色光下で生育させたミヤコグサMG20を用いて、赤色光(R)の光量子速密度を一定にし、遠赤色光(FR)の値を増減させて根粒着生試験を行うと、低R/FR条件(R/FR=0.1)では根粒数が有意に減少する。そこで,本年度はこのような根粒形成が抑制されている条件下でのジャスモン酸応答遺伝子の発現を解析した.その結果,白色光下でのphyB変異体と低RIFR条件下のMG20においてそれらの遺伝子発現は抑制されていた 次に低R/FR条件のMG20を用いて,ジャスモン酸を添加することで根粒形成が回復するかどうかをLjNIN遺伝子の発現および感染糸形成で評価した.LjNIN遺伝子は,根粒原基や感染糸形成のマーカーとなる遺伝子であることが分かっている.低R/FR条件のMG20を0.1μMジャスモン酸で処理するとLjNIN遺伝子の発現は有意に増加した.また,同じく0.1μMジャスモン酸で低R/FR条件のMG20を処理した場合,感染糸数に関しても有意に増加することが明らかになった.以上の結果は,マメ科植物と根粒菌による根粒形成は,光の質および量によってコントロールされていることを示しており,さらに光の感知に関しては少なくともPHYBが関与し,さらにそれにはジャスモン酸シグナリングが関係していることを示唆している.根粒形成は,多くのエネルギーを必要とするイベントであり,そのエネルギーは光合成に頼っている.したがって,光合成に不利な条件では,エネルギーの無駄使いを避けるために根粒形成を抑制しているものと考察できる
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