研究課題
葉緑体二次共生植物(藻類)であるクリプト藻とクロララクニオン藻では、葉緑体となった真核藻類の核の名残りであるヌクレオモルフが観察できる。本研究では「ヌクレオモルフの自律性と細胞周期制御」に焦点を当て,急速凍結置換法を用いた電子顕微鏡観察と種々の抗体を用いた蛍光顕微鏡観察を駆使して「葉緑体・ヌクレオモルフ・核のDNA合成時期・分裂時期の連関性」について明確にすることを目的としている。本年度は海産クリプト藻Pyrenomonas helgolandii材料に20℃、16時間明期:8時間暗期の条件で培養し、葉緑体・ヌクレオモルフ・核のDNA合成時期・分裂時期を特定した。BrdUの取り込み実験とDAPI染色による蛍光測光から、細胞内小器官である葉緑体の核様体は明暗周期に関係なく成長期の細胞では常にDNA合成をしているのに対して、核のDNA合成は明期開始10時間後から8-10時間の間で行われていた。これに対して、ヌクレオモルフのDNA合成期は核分裂直前の2-4時間の間に行われていることが明らかになった。微細構造観察から、ヌクレオモルフの分裂は核分裂に先立って行われ、まず間期にピレノイドに埋没していたヌクレオモルフは突出した。その後、ヌクレオモルフが分裂伸長する方向と同じ向きに内部に繊維状構造が出現し、それに沿って電子密度の高い顆粒が配置し、それぞれの娘ヌクレオモルフに分配された。それぞれの娘ヌクレオモルフは核分裂の両方の極近傍に位置していた。つまり、ヌクレオモルフには未だに真核細胞的な細胞周期制御が残存していることが明確に示すことになった。
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