脊索動物・尾索類・ホヤでは、心臓の収縮方向が規則的に逆転することが知られている。この「収縮逆転」の生理学的機構を巡る研究の歴史は100年以上にもわたるが、依然ほとんどの部分が謎のままである。本研究は、申請者らが近年開発してきた膜電位プローブを用いて、ホヤ心臓の膜電位の高精細時空間測定を行い、その収縮逆転機構の一端の解明を目指すものである。申請者が開発した、膜電位プローブ、mermaidが最も感度よく応答する膜電位の領域は、およそ-50mVから0mVである。これに対し、ホヤ心筋の膜電位変化がどのような領域で生じているかは不明であるので、この膜電位プローブの測定領域を、現在よりもさらに拡張したものを用意する必要があった。異なる電位依存性をもつ変異体を数種類開発し、-100mVから+100mVの広い範囲を測定対象とすることに成功した。また、mermaidを心臓に適切に発現するトランスジェニックカタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)の確立を、下田臨海実験所と共同で開始した。はじめに、全身ユビキタスな発現を示すが、心臓でプロモーター活性がかなり強いことが知られているelongation factor-1プロモーターを選んだ。ところが、細胞毒性のためか、ライン樹立までにはいたらなかった。そこで、心臓により特異的なプロモーターを選定し、再度、ライン樹立に取り組んでいる。
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