研究概要 |
2007年に我々が一次共生植物単系統説に反論を示して以来(Nozaki et al,2007,MBE)、真核植物と原生生物の多遺伝子系統解析の研究は高い支持率で一次共生植物を単系統とは解析しないのが一般的になって来た。これはハプト藻のゲノム-ESTデータの公開によることが多いと思われ、ハプト藻は一次共生植物と近縁であると解析される場合が多い(e.g.Hampl et al-2009,PNAS;Parfrey et al.2010,Syst.Biol.)。最近我々は進化速度の遅い核コード遺伝子だけを利用したギャップの少ないデータマトリックスを用いて系統解析した結果、ハプト藻は一次共生植物よりも不等毛植物・アルベオラータ(SA)に近縁であり、解析された統計的支持率はエクスカバータやアピコンプレクサの存在で低下した(Nozaki et al.2009,MPE)。しかし,この研究ではミドリムシ類は使用されていなかった。本年度は、新たに無色ミドリムシ類PelanemaのESTデータを新たに構築し、このデータと既存のEuglenaのESTデータ並びにゲノムデータが公開された不等毛植物EctcearpusとAurerococcusをNozaki et al.(2009)に加え,系統解析を実施した。その結果、ハプト藻の解析された系統的位置は細胞内寄生生物のアピコンプレクサの有無に左右され.アピコンプレクサと共に解析した場合は弱くSAに近縁、または緑色植物と姉妹群となり、アピコンプレクサを削除すると高い支持率でSAに近縁となった。一方Parfrey et al.(2010)のデータはミトコンドリアを欠くエクスカヴァータや微胞子虫を含むが、これらを代表とする細胞内寄生生物を削除して再解析した結果でも同様のハプト藻の系統的位置のゆらぎが得られた。
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