造礁性イシサンゴ類の内外には多くの無脊椎動物が生息している。22年度はイシサンゴ類に特異的に生息するサンゴヤドリガニを主体にして研究を行った。 日本の温帯域を中心に、また比較として熱帯域を含めた広範囲でサンゴヤドリガニとその宿主であるイシサンゴを採集し、ミトコンドリアCOI遺伝子を用いた分子生物学的手法を用いて解析した。その結果、サンゴヤドリガニはイシサンゴ類の科レベルで宿主特異的に生息する事が分かってきた。サンゴヤドリガニはイシサンゴ類に定着後はほとんどを巣穴の中、またはサンゴ表面で粘液を食べて生活しているため、イシサンゴ類に大きく依存していることが判明した。 また、イシサンゴ類の中で近縁であるオオトゲサンゴ科とウミバラ科、およびキクメイシ科とサザナミサンゴ科のそれぞれに生息するサンゴヤドリガニを詳しく解析したところ、それぞれの近縁なグループごとサンゴヤドリガニにも近縁性が認められた。このことは、イシサンゴ類とサンゴヤドリガニが共進化している可能性が高いことを示した。この研究をさらに進めることで、混沌としているイシサンゴの分類体系の再編についても役立つことが期待できる。 これらの研究から、サンゴヤドリガニ類がイシサンゴの分類の指標となり得る可能性が得られてきた。しかし、サンゴヤドリガニ類の分類研究がほとんどすすんでおらず、隠蔽種と思われるものもいくつか採取されたため、今後はサンゴヤドリガニの分類学的研究も同時に進めていく必要がある。
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