研究概要 |
1)高圧下での蛋白質結晶構造解析用のダイヤモンドアンビルセルの開発 到達圧力は1~2GPa程度の比較的低圧で良いが,蛋白質結晶はX線回折強度が弱いため出来るだけ大きい結晶試料を使用したい.また,蛋白質結晶は対称性が低く逆格子空間の広い範囲を測定する必要がある.このため,ダイヤモンドアンビルにALMAX社のアンビル(BOEHLER-ALMAX ANVIL)を採用し,キュレット径を1mmとして試料室の径を600μmまで拡大可能とし,かつ70度程度の広い開口角を達成した.卵白リゾチームの結晶,イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素(IPMDH)およびヒト・ユビキチンの結晶を用いて結晶を実際に封入加圧し,加圧による結晶や結晶化剤の溶解度の変化の試験を行なった. 2)常圧生物および好圧生物の蛋白質の試料調整 常圧で生育するShewanella oneidensis由来と,70MPaで生育する好圧菌Shewanella benthica由来のIPMDHについて大腸菌組換え大量発現,精製,結晶化して結晶構造解析し,他の常圧菌のIPMDHを含めた構造比較を行なって日本結晶学会年会で発表した.IPMDHの全体構造は常圧菌由来と好圧菌由来でほとんど変らないが,両者で保存されていないアミノ酸残基の分布や分子内部の空洞に差が観られた.
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