研究概要 |
高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の放射光ビームラインNW12Aの試料ゴニオにDACの搭載を可能にするためのマウントアダプタを製作し,17keVの高エネルギーX線を使用してDACによる高圧下での回折測定を可能とした.1時間程度でDAC実験環境に変更することが出来る.予備実験の結果,常圧から1GPa程度まで,圧力をクランプした状態で測定を行っても安定であることが分ったので,ビームラインNE1に設置されているルビー蛍光測圧器を使用してDACの圧力を設定して測定する手法を確立した.最初はDACの試料セル部内で微小な蛋白質結晶が浮遊してしまい,結晶の位置を固定出来なかったが,試料セル部に極細の繊維を結晶と同時に保持することで結晶を固定可能とした. 常圧菌と好圧菌の2種類のイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素(IPMDH)の結晶について,約600MPaの圧力まで結晶が溶解してしまわない溶液条件を確立した.対称性の高い結晶化条件の探索も継続しているが,2A程度の高分解能を与える結晶としては,空間群C2およびP21の結晶しか得られていない.そのため,DACの±40度程度の限られた開口角で完全性の高い回折データを収集するために,DACの試料セル部内に同時に3個程度の結晶を封入して固定する手法を開発した.それぞれの結晶の配向に注意することで,90%以上の完全性のデータを得られた。現在,常圧から600MPa程度までの数点の圧力条件での配位水を含めた構造解析を進めている.
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