研究概要 |
1)SPring-8の利用 震災特別枠でSPring-8のBL41XUの利用機会を得られたため,KEK PF-ARのビームラインNW12Aの試料ゴニオにDACの搭載を可能にするためのマウントアダプタをBL41XUのゴニオ用に改造し,30keVの高エネルギーX線を使用して高圧実験を行う環境を構築した.NW12Aでは,そのビーム強度から200μm程度以上の結晶サイズが必要であるが,BL41XUでは結晶の小型化が可能であることが分かった.但し,NW12Aと比較して高輝度なためヘリカルスキャンモードの使用が必須であることも確認された.なお,通常の課題申請では不採択となったため,その後の本年度後半の実験は復旧したNW12Aで実施した. 2)好圧生物と常圧生物の相同蛋白質のキメラ蛋白質の構造解析 常圧菌と好圧菌のイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素(IPMDH)について,それぞれ2種類及びキメラ蛋白質の常圧下での結晶構造解析を行った.それぞれの分子内空隙の大きさ,表面水和構造の差等に基づいて耐圧性の議論を行った. 3)高圧構造解析と蛋白質の耐圧性の解明 NW12Aが復旧したためIPMDHの高圧構造解析の不足していたデータ収集を実施し,圧力効果の詳細な解析を行う事が出来た.常圧菌と好圧菌のIPMDHで266番目の残基が,常圧菌ではSer,好圧菌ではAlaの差がある.常圧から600MPa程度までのデータを用いて,配位水を含めて詳細な構造解析を行った結果,このわずか1残基の変異と好圧菌IPMDHの耐圧性の関係を明らかにした.
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