研究概要 |
今年度は、大腸菌由来のTacプロモータとコリネ型細菌由来のCspBプロモータを利用して異種タンパク質(ヒストンシャペロンCIAおよびTAF-Iβ)の発現を試みた。CIAおよびTAF-Iβには、精製用にHis-タグを付与した。発現したタンパク質をアフィニティ精製したところ、CIAはTacプロモータで、TAF-IβはCspBプロモータで発現可能であることがわかった。プロモータと発現タンパク質の組み合わせに相性が認められたが、両プロモータはコリネ型細菌を用いた異種タンパク質発現に有効であることがわかった。しかし、コリネ型細菌の菌体破砕効率が低く、発現させたタンパク質の回収効率が低いという問題があった。そこでPhoDタンパク質の分泌シグナル配列を利用し、菌体破砕を必要としない分泌発現を試みた。CIA,TAF-Iβに分泌シグナルを融合しCspBプロモータで発現させたが、発現タンパク質の菌体外への分泌は確認できなかった。問題解決の別法として、菌体破砕を容易にするペニシリンG添加に応答するプロモータをタンパク質発現に利用し、組換えタンパク質発現と菌体破砕効率の向上を同時に実現する系も構築した。この系を用いてTAR-Iβを分泌発現させることを試みたが、まだ明確な結論は得られていない。高分子量型クロマチン因子HIRAに関しても、CspBプロモータおよびペニシリンG応答プロモータ配列を用いて発現を検討中である。今後は、これまでに得られた結果を更に発展させ、コリネ型細菌を異種タンパク質発現に安定的に用いることができるように開発を続けたい。
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