iPS細胞やES細胞の再生医療への応用が期待されている。医学応用では染色していない細胞で分化状態や生理活性を観察する手法が必須である。本研究では、iPS細胞やES細胞の核内部を直接観察し、核内の動きを直接観察出来る新しいタイプの位相差顕微鏡を開発を目指した。 ES細胞の様な厚みのある細胞の核を位相差顕微鏡で観察するには、観察対象である細胞の「厚さ」、細胞内構造の「サイズ」と「屈折率」に応じて、「透過率」「位相量」「アポダイズド帯」の「透過率」と「幅」を設定する必要がある。しかし、現在の光学顕微鏡では、これらのパラメータは、工場出荷時にかくていされ、厚めの観察試料の可視化に最適なものは必ずしも多くはない。そこで本研究ではES細胞や、iPS細胞など、発生工学の分野で使われている細胞の可視化に応用できる顕微鏡の開発をめざした。 当初計画では、ミコイドディスクを用いた特殊な位相差顕微鏡を試作することを想定していたが、予算の減額により、ミコイドディスクを購入出来なかった。このため、本試作では、ミコイドディスクと同等の機能を持つ光学部品を自作し、デジタル画像処理と組み合わせることで、細胞核の内部構造の可視化に成功し、核内構造の動態を調べることが可能になった。 この装置を用いて、核内部の蛋白質からなる構造を、これまでにない精度で可視化することに成功した(未発表)。細胞核内の構造物が、活発に運動する様子が観察され、現在、機能との関連を探っている。今後は、ES細胞などの可視化を試行し、有用性を確かめる予定である。
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