EBNA1のRNA結合活性がEBウイルスDNAの複製開始に重要であることが示唆されている。私らの最近の解析からヒトORCがin vitroでRNA結合活性を有するということが明らかとなり、共通RNAを介したORC-EBNA1複合体がoriP上で形成する可能性が考えられた。そして、このORCの有するRNA結合活性が、EBウイルス複製だけでなく細胞性DNA複製においても何らかの役割があることが推測された。そこで本研究では、細胞内ORCが結合しているRNAの同定を目指した。まず細胞内ORCを免疫沈降によって濃縮するために使用するORC抗体の検討を行った。その結果、市販の抗ORC3抗体および抗ORC1抗体を併用することによって、可溶化したORCのほとんどを免疫沈降させる条件を決定することができた。このようにして集めたORCからのRNAの精製、cDNAクローニングおよびシークエンス解析を進めたが、有意な結果は得られなかった。なお今回の免疫沈降で使用した抽出液は、細胞の全ORCの約半分しか含まれておらず、おそらく強固に核マトリクス/クロマチンに結合していると考えられるORCは解析の対象とはなっていない。今後は、このいわゆる不溶画分に含まれるORCを可溶化させる条件を検討して、RNAの同定を進める。また、これまでの解析からORC1サブユニットが直接RNAに結合する可能性が推測される。そこで今後は、ORC1サブユニットに着目して、ORC1のRNA結合ドメイン解析を進めていく。そのためのRNAプローブを用いたORC-RNA結合のゲルシフト法の条件検討を行う。その解析を進める中で、RNAに関する特異性、RNAとORCとの結合の特徴などを明らかにして、細胞内ORCの抽出条件に反映させていく。
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