運動や分裂に伴う細胞骨格再編成や、転写翻訳、輸送など、細胞内のほぼすべての現象において、生み出される「力」が重要な制御因子となる。ところが(広い意味での)モーター蛋白質がどのような力を作りだし現象を制御するのか、in vitro一分子レベルでの力発生の知見は蓄積されつつあるものの、細胞内では測定が困難である。とりわけ、細胞が磁場を認識する(磁場応答する)際にも力発生が重要だと予測されるものの、そのメカニズムには謎が多い。 細胞のサイズにおける測定の困難なことが、メカニズム解明の障害になっている。さらに、生体物質の応答を検出するのが困難であった。本研究ではまず、磁場に応答して細胞(特に細胞骨格)に作用を引き起こす可能性のある生体物質、および生体物質派生の物質の探索を行った。磁場と細胞の関係、候補物質(蛋白質)の磁場応答、および細胞に引き起こされる現象を、主に蛍光イメージングにより調べた。蛍光イメージングの際の標識法、および応答の分子レベルでの検出が困難であったが、実用上は問題解決し、さらにシグナルノイズ比の良い測定法を調べている。 今後、磁場の変化を現在よりも効果的に引き起こせる実験装置を作製した上で、磁場応答のメカニズムと、その仕組みの応用(積極的な利用法)を探っていく。磁場応答のメカニズムは生物学に残された大きな謎の1つであり、また、幅広い発展が期待できる研究領域である。特にイメージング技術を駆使して、仕組みを明確に示していく。
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