I-a) Jmjdla欠損XY個体が雌化する条件の統計学的調査 Jhdm2a欠損でなおかつY染色体を有する個体のうち、雌化個体が現れる条件を調べた。その結果、Y染色体がES細胞株であるTT2に由来した場合に著しく雌化するのに対し、C57BL6に由来した場合には頻度が非常に低くなることが分かった。さらに、Y染色体を市販のCBAマウスに由来するもので解析した結果、TT2とC57BL6との中間程度の頻度で雌化が見られることが分かった。 1-b) Jmjdla欠損雌化XY個体の生殖腺の組織学的解析 上述した雌化個体(3~4ヶ月齢)の生殖腺を単離し、固定して組織学的解析を行った。その結果、組織像が雌化した個体間で相当にばらつくことが明らかになった。つまり、正常な雌と変わらずに成長期の卵で満たされた卵巣を持つ雌化個体もいれば、殆ど卵が認められない個体もあった。 1-c) Jmjdla欠損雌化XY個体の妊孕性解析 Jmjdla欠損雌化XY個体と野生型の雄を同居させ、自然交配によって次世代の仔が生まれるかどうかを調べた。その結果非常に驚くべきことに約3割の雌化個体に妊孕性が認められた。それらの個体から生まれてくる仔は外見上全く正常な個体と区別が付かなかった。以上のことから、Jmjdla欠損で雌化する個体のうちの何割かは完全に近い性転換であることが明らかとなった。また雌化にはJmjdla以外にY染色体(の由来)が影響を与えることが明らかとなった。
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