研究課題
分子系統学的解析は、系統樹作成のための欠くことのできないツールである。従来は、特定の遺伝子の系統樹を作成することで、生物の系統関係を推測してきた。しかし、広い範囲の生物を対象とすると、オルソログの数が減少し、全生物の場合、31遺伝子しかなく、しかも30遺伝子が翻訳に関係するものであった。このように偏った、しかも少ない遺伝子数で信頼できる系統樹を描くことはできない。近年、全ゲノム配列が解読された生物種が増えるに従って、これを利用したツールが開発された。本研究の目的は、全ゲノム配列に基づいた系統樹の自動作成ツールを開発し、これを用いて、(1)全生物の系統樹「Tree of life」を作成し、(2)このツールの理論化に向けた研究を行うことである。本年度は、特にシアノバクテリアと光合成細菌を取り上げ、系統樹の作成手法の開発に取り組んだ。まず、ベストマッチのe-valuesから進化距離を算出する次の二つの方法を比較した。(1)双方向ベストマッチする遺伝子の組み合わせでのみでe-valuesを求め、これをもとに進化距離を計算する、(2)片方ベストマッチの遺伝子も含め、全ての組み合わせによるe-valuesを求め、進化距離を計算する。これらの値から、系統樹を作成したところ、(2)の方法による系統樹が実際に近いことが明らかになった。さらに、系統樹の信頼性を示すBootstrap値を求める方法を開発した。これは、任意に遺伝子を抽出し、これによって系統樹を作成し、どれだけの割合で分岐を支持したかを示すものである。この結果、門のレベルを除くと、100/100に近い確立で支持され、系統樹の信頼性を確認することができた。
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