昨年度得られた運動異常を生じるM2発芽個体の培養を続けたところ、どの株も顕著な発育不良を示し、運動機能のみを欠損した変異体は得られていないことがわかった。形質転換実験については、子葉ノード部位へのアグロバクテリウム感染条件の最適化を行った。その結果、スーパーバイナリーベクターpSB111の使用および共培養培地へのMESバッファーの添加(0.1%)が高効率でのアグロバクテリウム感染に必須であることを見出した。また、共培養培地のpHの最適化(pH 6.1)および共培養の前にノード外殖片を界面活性剤(0.03% Silwet L-77)で処理することにより、感染効率をさらに改善することができた。次に、形質転換カルスから得られた再生シュートを用いて根の誘導条件を検討した結果、水を添加しただけのバーミキュライトが最も高い誘導効率(80%)を示した。形質転換効率は最終的に12%(用いた外殖片のうち、トランスジェニック個体の再生に成功したものの割合)に達し、次世代以降への導入遺伝子の伝達も確認できた。サザンブロット解析により、得られたトランスジェニック個体においては非常に少ないコピー数(1~2個)のT-DNA挿入が起こっていることが判明した。最後に、独立に得られた50系統のトランスジェニックT0個体に関して運動性能を調べたところ、全ての個体においておじぎ運動および就眠運動が起こることを確認できた。以上の結果から、本研究により確立されたオジギソウ形質転換体の作出手法は、おじぎ運動の分子メカニズムを解明するための有効なツールとなることが示された。
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