研究概要 |
マメ科植物は根粒菌と共生して窒素固定を行うが,低温条件下では根粒形成(nod)遺伝子の発現が抑制され,根粒着生数の減少や窒素固定活性の低下が生じ,それにともなって植物体の生長が抑制される.そこで,本研究ではnod遺伝子を活性化するフラボノイドやジャスモン酸類を含む培地で前培養した根粒菌の接踵が,低温条件下における数種マメ科作物の根粒着生に及ぼす影響について検討することとした.また,低温とともに過剰水分や硝酸イオンなどの根粒形成の阻害条件下における根粒菌のプライミング効果についてもあわせて検討することとした.冬作マメ科作物であるヘアリーベッチを圃場で栽培したところ,地上部乾物重の増加程度は低温条件下での播種で明らかに抑制された.すなわち,9月20日播種が最も生育量が高く,播種期が遅くなると顕著に低くなった.窒素固定活性は,9月20日播種では,播種後3週から6週目にかけて著しく増大したのに対して,気温が低くなった10月12日以降播種ではそのような増大は認められなかった.また,9月20日播種では根粒着生までの日数が早かった.グロースチャンバーを用いて12℃および22℃で根粒着生について調査したところ,播種後15日目において22℃では着生数が多く,高い窒素固定活性を示したが,12℃では根粒着生は認められたものの窒素固定活性は極めて低い値を示した.播種後30日目においても窒素固定活性は12℃では有意に低かった.水田転換畑の過剰土壌水分条件下におけるアズキの生育と根系発育について検討したところ,湛水条件下では根粒着生が明らかに抑制されたが,不定根の発生が著しく,,そこに根粒が形成して窒素固定を補完する可能性が示された.現在,ゲニステインおよびジャスモン酸メチルで24時間培養した根粒菌を用いて,ヘアリーベッチとアズキにおいて根粒着生への影響について調査しているところである.
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