研究概要 |
マメ科植物は根粒菌と共生して窒素固定を行うが,低温条件下では根粒形成遺伝子の発現が抑制され,根粒着生数の減少や窒素固定活性の低下が生じる.そこで根粒形成遺伝子を活性化するフラボノイドを含む培地で前培養(プライミング)した根粒菌の接種が,低温条件下におけるマメ科作物の根粒着生に及ぼす影響について検討することとした.22年度は,近隣の和歌山県を主産地とするエンドウ(品種:ウスイエンドウ)の播種期の遅れによる低温遭遇に着目した.先ず生育初期の根系発育と根粒形成の様相を明らかにするために,根粒菌の接種が根系発育に及ぼす影響を調査した.接種区でほ接種後7日目から根粒が確認された.14日目の総根長を調査したところ,対照区に比べて接種区で短く,接種により細い根の割合が低下することが示唆された.YM培地で増殖した根粒菌懸濁液を0,1,3,10mg/1のナリンゲニン水溶液に添加して30℃で48時間静置した.遠心分離して回収した根粒菌を実生に接種し,13℃または18℃で生育させた.接種後7日目において,18℃区ではいずれの濃度区でも根粒が形成され,根粒数,アセチレン還元活性は10mg/1区で最も高い値を示した.13℃区ではいずれの濃度区でも根粒は確認できなかった.両温度条件とにプライミング根粒菌を接種すると総根長が長くなる傾向が認められた.以上のように,ナリンゲニンでプライミングした根粒菌を接種すると総根長が回復する可能性が示された.低温条件下におけるナリンゲニンでのブライミングによる根粒形成の促進については明確な結論は得られなかったものの,根粒菌の感染において重要な要素となる根系構造にプライミシグが影響を及ぼすことが示唆された.次年度は多様な環境ストレス条件下における根粒形成の制御技術への応用を目指して根系発育との関係からより詳細に解析を進めたいと考えている.
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