収穫後の青果物は、乾燥などの環境ストレスを受け、鮮度や内部品質の低下を引き起こす。個々の青果物の環境ストレス耐性にはばらつきが大きく、それを正当に評価することで効率的な流通が可能となり、さらに耐性のすぐれた青果物は高付加価値商品として消費者に提供できる。本研究では、環境ストレス耐性(その結果として変化する「鮮度」や「内部品質」)を非破壊かつリアルタイムで評価するシステムとして、「生物微弱発光」に着目し、その利用可能性を実証することを目的とした。 供試材料として、周年供給され、収穫後の乾燥ストレスに敏感に反応するオオバ葉を選んだ。オオバ葉は、採取株の新旧や採取位置を問わず、一定の大きさに達した時に収穫されるため、品質にばらつきが大きいことが予想される。 まず市販のオオバ葉の内部品質として抗酸化活性を測定したところ(n=10)、2.8倍程度の差異がみられた。また収穫後のオオバ葉にみられる褐変発生時期を観察したところ、貯蔵後4日で発生する葉もあれば8日たっても発生しない葉もあった。一方褐変発生時の葉重減耗率は26.3±1.1%とばらつきが小さく、さらに褐変発生とともに過酸化水素の急激な増加がみられた。このように、葉重減耗率が小さく乾燥ストレスに強いオオバ葉では、過酸化水素の発生が遅く、それに伴い褐変発生が遅れることがわかった。そこで葉重減耗率を非破壊かつ迅速に評価するため、呼吸量と生物微弱発光の一つである「遅延蛍光値」を計測したところ、両者とも葉重減耗率と有意な相関がみられた。呼吸量の測定には約1時間を要するが、遅延蛍光値は数十秒で済んだ。 このように遅延蛍光値を用いることで、環境ストレス耐性の評価を非破壊かつ迅速に行える可能性が見出せた。
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