生物微弱発光は、生物が放出するごく弱い光で、その値は動物の健康状態や植物の内部品質などの「生体情報」を反映して変化するといわれている。最近、この微弱な光を高精度で測定できる測定装置(浜松ホトニクス社製)が開発された。これを機に、青果物の内部品質を非破壊で評価するシステムの開発に取り組んだ。材料として周年入手可能なオオバの他、ブルーベリー、トマトを用い、評価する品質としてとくに消費者の関心が高く、環境ストレス耐性の指標となる「抗酸化力(ORAC値)」を選択した。 昨年までは装着するサンプルホルダーが小さく、切断したオオバ葉しか測定できなかったので、本年度はブルーベリーやミニトマトでも丸ごと測定できるようにホルダーを改良した。 その結果、励起光源としてピーク波長720nmのLEDを15秒当て、その後の青果物の発する蛍光量(遅延蛍光量という)を測定することで、とくにトマトに含まれるORAC値を精度高く(相関係数0.95)推定できることが明らかとなった。遅延蛍光量はとくに温度によって大きく変化するので、測定に当たっては、個々の青果物を同一温度にしておくことが重要であることも分かった。 これにより、青果物の抗酸化力を非破壊で評価し、その「情報」をつけることで高品質のものを適切な価格で販売する途が開けた。青果物のORAC値は、同一の圃場から同時期に収穫された外観の似たものでも2倍以上異なることも明らかとなり、高品質のものを適切な価格で販売する上で、非破壊評価の意義は大きい。今後本法を実用化するため、関連各社と共同研究を継続していくことが確定しており、結果の社会還元に向けて、動き出すことになった。
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