研究課題
植物の葉表面や葉組織には微生物が生息し、植物や病原微生物と相互作用することによって、植物の生育や様々な環境ストレス・病虫害に対する耐性に関わっているものと推察されている。しかし、実際の自然環境中において、難培養性微生物を含めてどのような微生物種が生息し、植物や病原微生物とどのように関わっているのかはほとんど明らかになっていない。本研究では、イネ植物体中の細胞間隙に生息する微生物群集の多様性と、同微生物の同定および植物への耐病性付与について研究を行ない、植物組織内に生息する微生物群集の病害抑制における役割を明らかにする。本年度は、(a)有機および慣行栽培イネの細胞間隙液に由来する微生物群DNAの解析とフラジェリン遺伝子の単離、および(b)同細胞間隙液に由来する微生物群の培養による比較解析と(有機栽培イネの細胞間隙液に特徴的な微生物の推定を行った。その結果、(1)有機および慣行栽培イネの細胞間隙液に由来する微生物群16SrDNA断片のDGGE法による比較解析:有機および慣行栽培イネ苗の細胞間隙液よりDNAを抽出し、16SrDNA断片をPCR後、DGGE法により細菌群の多様性を比較解析したところ、有機栽培と慣行栽培で、濃度に変化が認められたバンドが存在したが、全体的なバンドパターンは類似していた。(2)有機および慣行栽培イネの細胞間隙液に由来する微生物群の培養による比較解析:有機・慣行栽培水田より採取したイネの葉身と葉鞘から細胞間隙液を採取し、NA培地に塗布して培養したところ、苗および田植え後のイネの細胞間隙液において、有機栽培に特徴的なコロニー(培地上に形成されるコロニー数が慣行栽培イネに比べて明らかに多い)が認められた。有機栽培イネに特徴的な16菌株を単離・培養した。(3)有機栽培イネの細胞間隙液に特徴的な微生物の推定:有機栽培イネに特徴的なコロニーの形態および培養性状より、同コロニーは細菌であると判断されたため、16SrDNA断片をPCR増幅し、クローニングを行った。得られたクローンの塩基配列を決定し、相同性検索を行ったところ、16菌株中6菌株がPseudomonas sp.であった。
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Journal of Plant Physiology
巻: 168 ページ: 1972-1979