カイコに代表される鱗翅目昆虫や毛翅目、半翅目昆虫は、1染色体に多数の動原体を有する特異な分散型動原体と呼ばれる染色体を持つことが知られている。しかもカイコゲノムからは、セントロメアタンパク質の多くが欠失しており、そのキネトコアの形成機構には謎が多い。本年度は、カイコゲノムに残るセントロメア、キネトコア形成、紡錘糸付着に関わるタンパク質の多くを同定した。セントロメア形成に関わるタンパク質として、Cenp-S、Cenp-X、Cenp-N(Mis15)、Cenp-L、Cenp-M、Cenp-I(Mis6)、紡錘糸付着とチェックポイントに関わるタンパク質としてMAD1、MAD2、BUB1、BUB3を新たに単離同定している。 また、細胞分裂期に一過性にセントロメアに局在し、キネトコアの一部となる細胞分裂染色体パッセンジャータンパク質複合体(CPC : INCENP、BorealinとSurvivin)を中心に、本年度同定したタンパク質とInsect Two Hybrid Systemを用いた、M期染色体上でのタンパク質相互作用の細胞生物学解析を行い、分散型動原体染色体における紡錘糸の付着に関わるタンパク質群の相互作用ネットワークの一部を明らかとした。 さらに、CPCを構成するタンパク質として新たに、Aurora-A、Aurora-B、TD-60の3種の同定にも成功し、これらのCPC形成制御に関わるタンパク質の機能解析を進めている。
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