本研究はショウジョウバエ複眼に形態異常を示す変異株より単離したDrosophila nucleostemin 1(dns1)遺伝子およびdns1と相同性の高いdns2遺伝子の機能解析を目的としている。DNS1およびDNS2にGTPase活性のあることを明らかにした。細胞内局在に関しDNS1は核小体に、DNS2は1齢幼虫では核小体に、3齢幼虫では核質にと発生により局在が変化することを明らかとした。DNS1のアンチセンス変異株のストレスに対する影響を統計的に評価し、高温ストレスによる致死率の変動は観察されなかったものの、飼育条件における個体密度により致死率が変化すること、更に高塩濃度条件下で致死率の亢進を観察した。即ちDNS1は関与するストレス機構に特異性を有していることを明らかにした。 一方DNS1に結合し、機能的に影響を与える低分子化合物の探索をケミカルアレイを用いて行い、GTP存在下で6個の候補化合物を見いだした。DNS1のGTPase活性をin vitroで測定可能なアッセイ系を構築し、6個の化合物のうち2個において、DNS1のGTPase活性を亢進させることを明らかにした。 ショウジョウバエDNS1では哺乳類NSの結果と異なる知見が多数得られており、dns1とdnp53の2重変異株を樹立し、クローン解析法によりDNS1機能欠失による細胞死がDmp53非依存的である決定的証拠を得た。またDNS1を過剰発現させた細胞における発現量を定量化し、成虫まで過剰発現を継続しても正常発生が行われること、細胞のサイズに変動がないことを示した。以上の結果は哺乳類NSとショウジョウバエDNS1とでは細胞内における制御機構が異なることを明らかにできた。
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