Nitrile hydratase(以下、NHase)を対象として、本申請者らはこれまでに例のない新規かつユニークな翻訳後活性化機構を発見し"Self-Subunit Swapping"と命名した。本研究では、"Self-Subunit Swapping"で最も重要な役割を果たす"Self-Subunit Swapping"シャペロンタンパク質複合体の機能および翻訳後修飾機構の詳細を解明することを目的とした。 Nh1Eタンパク質(以下、eタンパク質)と。(Coイオンを含まない)αサブユニットから構成される複合体αe_2(アポαe_2)にin vitroでCo添加するとCoが取り込まれることを発見した。そこで、アポαe_2から"Coイオンを持たないαサブユニット"と"eタンパク質"をそれぞれ分離・精製した。"Coイオンを持たないαサブユニット"にin vitroでCo添加してもCoが取り込まれなかったが、さらに"eタンパク質"を添加すると"Coイオンを持たないαサブユニット"にはCoが取り込まれた。即ち、αサブユニットへのCoの取り込みは"eタンパク質"依存的であり、この時、"eタンパク質"は、「タンパク質へのCoの挿入」に関与していることから、金属シャペロンとして機能することが示唆された。また、アポαe_2にCoが取り込まれたαe_2を精製し、トリプシン消化後MALDI-TOS/MS解析により、αサブユニットのシステイン残基を調べた結果、翻訳後酸化修飾されていることを実証した。この時、"eタンパク質"は、「システイン残基の酸化」に関与していることから、酸化反応の触媒、すなわち酵素として機能することが示唆された。すなわち、「"Self-Subunit Swapping"シャペロン」として機能するeタンパク質が、「金属シャペロン」、「酸化反応触媒」の新たな2つの機能を持つことを新たに発見した。
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