厚みのあるバイオフィルムのためのCRM法の改良(COCRM法の開発):現在、CRM法では厚みのあるバイオフィルム全体を明瞭に可視化することができない。申請者は、この問題がバイオフィルムの高さ方向で信号強度が大きく変動することに起因することを発見した。この変動は、バイオフィルムの密度や構成種の変化によってその程度や変動率が異なり、機械的に補正を行うことが難しい。そこで、焦点面毎に共焦点顕微鏡の各種パラメータ(検出器感度、ピンホール径、照明強度)などを最適化しながら走査を行うCRMの改良法、COCRM法(Continuous Optimizing-CRM)を考案した。よってここで、COCRM法を用いて厚みのあるバイオフィルム全体が可視化可能であるかを検証する。世界中で(厚みのある)バイオフィルム研究のモデル微生物として用いられている緑膿菌を使用する。それに、GFPを組込んだ組換え体を用いてバイオフィルムを形成させ、それらバイオフィルムの三次元構造を通常のGFPを検出する共焦点レーザー顕微鏡観察法とCOCRM法それぞれで観察する。そうして、共焦点レーザー顕微鏡観察法(GFP)により得られたバイオフィルム三次元構造をコントロールとして、COCRM法によるバイオフィルム三次元構造と比較することによりCOCRM法の有効性を評価した結果、好気条件下では同様な結果が得られた。また、嫌気条件下において、AFGAS法を用いて観察を行った。GFPは蛍光発色出来ずバイオフィルムおよび細胞が認識できなかったにも関わらず、COCRM法では問題なくバイオフィルムおよび細胞が感度よく認識出来た。このことは、COCRM法が非染色・非侵襲かつ非GFPで使用可能な新しい微生物細胞およびバイオフィルム観察法であることを示している。
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