1.Roseobacter denitrificansの遺伝子操作法の確立 広宿主域ベクター、抗生物質耐性遺伝子マーカー、および、形質転換法(接合伝達、エレクトロポレーション)を検討することにより、R.denitrificansへのプラスミド導入、遺伝子破壊株作製法を確立した。この方法を用いて、嫌気呼吸(脱窒)の鍵酵素である一酸化窒素還元酵素遺伝子norCB、および、脱窒遺伝子の転写調節遺伝子と予想されたdnr1とdnr2の破壊株の作製に成功した。 2.嫌気呼吸(脱窒)関連遺伝子の発現制御 上記で作製した変異株の表現型解析、および、相補実験により、何れの遺伝子も脱窒による嫌気的生育に必須であり、DNR1→DNR2→脱窒遺伝子という、段階的な制御系になっていることが明らかになった。2つのDNRタイプの因子がどのようなシグナルを感知して転写制御を行っているかについては今後の研究課題である。 3.トランスクリプトーム解析 R.denitrificansのゲノム情報を基にマイクロアレイを作製し、好気-嫌気、明-暗条件でのトランスクリプトーム解析を行った。光合成関連遺伝子については、酸素の有無によらず転写されていたが、好気条件下で光により発現が抑制されることが分かった。逆に、脱窒関連遺伝子については、好気条件では光により発現誘導が起こった。これらの結果から、光に応答して嫌気呼吸と光合成の発現のバランスを取るメカニズムが存在することが示唆された。
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