近年、殺虫性微生物Baeillus thuringiensis(Bt菌)株からがん細胞に作用する新しい毒素パラスポリンを発見した。今回、バイオメディカル資源となり得るBt菌を国内のみならずグローバルに探索し、新たな抗がんタンパク質を発見する。さらに新たなチャレンジとして、抗病原寄生虫への毒素を探し、トリパノソーマなどのアフリカ大陸などに蔓延する重篤な寄生虫病の予防、治療ヘバイオシーズとすることを目標とし研究を進めた。初年度は主にサンプリングとBt菌の効率的なスクリーニング法の確立を行った。サンプリングは国内4ヶ所(福岡県、熊本県、福島県、北海道)の土壌や植物の葉などを採取した。研究連携者(跡見博士・京都大学)から、南極で分離されたバシラス・セレウス属とリボソームDNAが一致する菌株を頂いた。サンプリングからBt菌の分離を試みたところ、現在数株のBt菌を単離した。南極で分離されたバシラス菌は胞子形成時に封入体を形成せず、Bt菌ではないと考えられる。福岡県工業技術センター生物食品研究所のBtライブラリーから、100株のBt菌の譲渡を受けた。Bt菌の簡便な判別法は、栄養選択培地や封入体を利用した染色法でコロニーの識別を試みたが、明確な判別には至っていない。ただし、顕微鏡観察では明確な封入体の染色像が見られるため、画像情報処理技術などを駆使すれば、簡便で自動的なBt菌の1次判定法の確立が可能と考えられる。一方、アフリカなど熱帯地域で蔓延するトリパノソーマ感染症の対策として、抗原虫作用性のBt菌毒素活性としてパラスポリン2(PS2)を用いて解析した。この結果、PS2は血流型、唾液腺型トリパノソーマに対して毒性を示すことがわかった。
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