研究課題
自然界に生息する微生物叢から分離可能な微生物は、古くから1%以下と見積もられていた。最近の遺伝子解析の結果、残りの大多数の微生物は難培養性微生物であることが明らかになりつつある。申請者らは難培養性微生物を含め、新たな観点から微生物のスクリーニング法を見直し、最終的には網羅的培養法の構築を目指しており、本申請課題では取り扱いの難しい偏性嫌気性細菌類、とくに好温性菌を標的とした。本研究期間内に偏性嫌気性微生物培養で制限培養因子となる溶存酸素などの諸因子の寒天培養基内での拡散の定量的把握と拡散係数の測定ならびに理論式の確立を進め、殺菌後の寒天培地(ほぼ溶存酸素濃度はゼロ)への大気からの酸素の拡散進行状態を経時的に測定し、酸素濃度勾配の実相を測定することに成功した。このような試みは過去なされたことは皆無である。拡散理論式を検討中である。平成22年度中には理論式を導くとともに、寒天内で酸素勾配の状態を定常的に維持する方法を確立するとともに、嫌気性菌培養の目的で無酸素を維持する方法を探りたい。