細胞質のミオシンとアクチンによる分子モーターシステムは、細胞運動や物質の輸送に重要な役割を果たしている。研究代表者らは、アクチンファミリー分子が細胞核内に存在しており、クロマチン・細胞核内の機能構造に重要な役割を果たしていることを見出している。一方で、本研究の海外研究協力者であるカレル大(チェコ)のDr.PavelHozakは、細胞核内のミオシンファミリーを見出し、遺伝子発現にこのミオシンモーターが関与することを報告している。本研究では、核内のミオシン-アクチンファミリーによるゲノム機能制御の分子機構を解明すると共に、その機構を利用した人工的な転写・分化・再生の制御に向けての応用展開を図ることを目的としている。細胞核に局在するアクチン関連タンパク質であるArp6を破壊した細胞をDT40細胞を用いて作成し、核ミオシンのダイナミクスをFRAP(消光後蛍光回復測定)によって解析したところ、そのダイナミクスに変化が観察された。また、Arp6ノックダウンによっても変化が観察された。Arp6と核内ミオシンの相互作用は、培養細胞中でタグを付加したタンパク質を免疫沈降法によって解析することで確認された。さらに、遺伝子の人工的な制御に向け、複数のコンストラクトを作成し、その機能の確認を行った。これらの研究により、細胞核内のアクチンーミオシンファミリーによるゲノム機能制御の存在と、その応用展開における重要な知見が得られた。
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