研究課題
胆汁酸はコレステロールの異化産物であり、肝臓で合成され、小腸に分泌される。その95%以上は小腸下部で吸収され、肝臓へと再び戻る腸肝循環をする。血中には、数マイクロモル程度の胆汁酸が存在し、肝臓以外の組織に存在する胆汁酸受容体TGR5に結合し、情報を伝達する。骨格筋細胞表面に局在する受容体を介して、熱産生遺伝子の発現を亢進させ、エネルギー代謝改善効果を発揮する。この事実から、胆汁酸の機能を模して、胆汁酸受容体を介してエネルギー代謝を改善させる食品成分の探索を行なう目的でアッセイ系を樹立した。ヒトTGR5遺伝子をクローニングし、発現ベクターに組み込み、培養細胞に発現させた。同時に、TGR5を介して細胞内cAMPが上昇し、内因性の転写因子CREBが活性化されることから、CREBに応答するレポーターを同じ細胞に導入し、TGR5リガンド活性をルシフェラーゼ活性で評価する系を構築した。このアッセイ系を用い、約150種類の精製食品成分を探索した所、柑橘類の成分が強い活性を有することを見いだした。本成分は、このアッセイ系を用いる限り、内因性リガンドのケノデオキシコール酸と同等か、やや低い程度のリガンド活性を発揮した。この成分を高脂肪食に混餌し、長期間マウスに投与した所、想定される血糖値、インスリン濃度の低下、体重増加の減少が確認された。以上の事実から本成分を「TGR5作動剤」として特許の出願を行った。
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J.Nutr.Sci.Vitaminol.
巻: 56 ページ: 326-330