食品成分が生体の免疫機能を調節しうるということは、国内外の多数の報告によって裏付けられてきた。しかし個人の免疫機能の状態を評価する方法の欠除のため、食品成分の免疫調節機能の評価が困難である。免疫機能が正常である状態は、免疫系の構成要素のバランスが保たれている状態を示すが、本研究では単純に「病原体あるいはガン細胞を排除するための免疫系の能力」を「免疫力」と位置づけた。免疫機能低下状態にしたマウスと正常マウスの免疫細胞において、網羅的遺伝子発現解析を行うことを通じて、「免疫力」の評価に用いることができる分子・遺伝子の発現変動を評価パラメータとして確立することを目的として研究を行った。通常の成体マウスに低カロリー食あるいは低タンパク食を投与することにより低栄養状態にすることで、免疫機能を低下させた個体を用意した。これらのマウスにアジュバントとともにタンパク質抗原(卵白アルブミン)を2週間間隔で2回腹腔内に投与し、2回目の投与1週間後の血清を採取し、特異抗体の存在量をELISA法にて評価した。その結果、低カロリー食、低タンパク食両群で通常食群と比較して特異抗体産生応答の低下が観察された。また、各群のマウス脾臓から、B細胞、T細胞、マクロファージを精製し、総RNAを抽出した。これらに対しそ各種サイトカインmRNA発現量をリアルタイムRT-PCR法にて解析したところ、低カロリー食および低タンパク食群で通常食群と比較して発現低下傾向を示すものが観察された。
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