アポリポタンパク質B(apoB)を主要タンパク質に持つ低密度リポタンパク質(LDL)は、動脈硬化症に対して正の相関を持つことが明らかにされている。本研究では植物由来成分でイチゴに多く含まれるエラグ酸(Ellagic acid)をHepG2細胞に添加し、apoB分泌及びapoBに関連する脂質代謝関連遺伝子発現に対する影響を、DNAマイクロアレイなどを用いて網羅的に解析するとともに、その作用機構を検討することを目的とした。その結果、以下のようなことを明らかにした。 <実験1>10、25μMのエラグ酸添加によりapoB分泌量はコントロールと比較して有意に減少、LDLR mRNAは有意に増加、MTP mRNAは有意に減少した。 <実験2>25μMエラグ酸添加によりLDLR遺伝子の転写活性に有意な変化は認められなかった。 <実験3>DNAマイクロアレイにより、LDLR mRNAに有意な増加、MTP mRNAに有意な減少、JNK経路の下流にあるc-jun mRNAに有意な増加、ERK mRNAに有意な増加が観察された。 <実験4>SP600125を用いてJNK経路を阻害したところ、エラグ酸によるLDLR mRNAの有意な増加に影響を与えなかったが、U0126を用いてERK経路を阻害したところ、エラグ酸によるLDLR mRNAの有意な増加は消失した。よって、エラグ酸によるLDLR mRNAの有意な増加にはERK経路が関与することを発見した。
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