森林を対象にして、生物多様性が低下すると生態系機能も低下するという関係(多様性-生態系機能関係と呼ぶ)を調べた研究はほとんど行われていない。本研究は虫こぶ形成昆虫を対象とすることで、その多様性-生態系機能関係を明らかにすることを目的とする。虫こぶが形成されたケヤキの葉は、虫こぶが形成されていない葉と大きさは変わらなかったがバイオマスは15%増加していた。エゾマツカサアブラムシ及びヒメカサアブラムシの虫こぶをリターケースに入れて林床に設置し、1年後の分解速度を調べた結果、虫こぶ形成により分解が10%遅延することが明らかになった。分解速度は虫こぶの種間では変わらず、複数種の虫こぶを混合しても影響はなかった。虫こぶの大きさや捕食の有無による違いはなかった。本研究では虫こぶ形成昆虫は低密度であっても様々な生態系機能をもたらし、その多様性-生態系機能関係は構成種により変化することが示された。
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