目的:高圧抽出装置を開発して、針葉から遺伝子診断用のDNA抽出と、木部から発現解析用のRNA抽出を行う。抽出性能評価は、前者のために細胞質DNAのmatK断片を、後者では、心材形成と関連付けるために核DNAのsts (stilbene synthase遺伝子)断片を対象とした。 作製装置の性能:既存1次ポンプに加えて、新たに二次高圧ポンプ(最大加圧力は400MPa)を導入した。これにより増圧器とピストンが不要となり、装置本体の重量が当初の3/4に軽減された。実用的な加圧条件として、250MPa/1分/回が得られた。また、96試料(PCRチューブ)を一度に抽出可能であった。 核酸の抽出:PCRチューブに、CTAB抽出液(10-25μL)とアカマツ試料断片(1-10mg新鮮重)を入れた。さらにミネラルオイルでチューブ内を完全に充たした後、本高圧抽出装置にかけた。高圧・減圧処理を5分かけて繰り返した。チューブを遠心した後、水層をピペットで採取してPCRにかけ、遺伝子検出の有無を判定した。葉緑体DNAよりも核DNAは抽出されにくかった。試料からのDNAの抽出は、若い組織ほど、加圧・減圧回数は多いほど、抽出効率が上がる傾向がみられた。RNAの抽出は、基本的にDNAと同様に抽出・逆転写後、sts遺伝子検出を試みた。サリチル酸処理した芽生えでは再現性よくsts遺伝子が検出された。アカマツ樹幹から採取コア(6月)をサリチル酸処理後、高圧抽出したが該当遺伝子は検出できなかった。一方、採取コア(10月)では、一部の試料に該当遺伝子が検出された。 まとめ:本装置は遺伝子診断のように多数試料を処理する核酸抽出に有効であった。核酸の抽出効率を上げるためには、250MPaより高圧で繰り返し回数を増やす条件が有効であると推測された。
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