研究概要 |
北海道噴火湾において生きたカイアシ類の体内通過音速ならびに生体密度などの音響物理パラメータの測定を4月,5月,6月に行った。カイアシ類の中には体内にオイルを貯め込む種があり,そのオイルの有無により音速や密度が大きく変化することが分かり,これはまた,音響反射の強さにも影響することが示唆された。 さらに,独立行政法人水産総合研究センター・水産工学研究所において昨年度構築したカイアシ類音響反射測定システムを用いて,生きたカイアシ類のTS測定をカイアシ類の姿勢を変化させながら行い,TSの姿勢角特性(TSパターン)を調べた。この測定は4月11個体,5月9個体,6月7個体の計27個体について行った。その結果,体内にオイルを貯め込んだ個体とオイルを持たない個体ではTSパターンに大きな違いが見られ,また,音響反射の大きさにも違いがみられた。体内にオイルを貯め込んでいない個体のTSの実測値については,従来用いられてきた音響散乱モデルによるTS推定値と比較的よく一致したが,オイルを貯め込んだ個体のTS実測値は,全く異なった。これについては来年度さらに検討を行う。 一方,カイアシ類のサイズ別の密度推定を行うべく開発予定の広帯域音響システムに関しては,既存の広帯域システムを用いて,まずカイアシ類よりサイズの大きいオキアミ類で,その広帯域散乱特性を調べた。その結果,固定周波数での測定結果と同様,オキアミ類については音響散乱モデルによる広帯域特性とほぼ同様の特性を示すことがわかった。来年度は,このシステムを用いてカイアシ類の広帯域音響散乱特性を調べる。
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