(1)感染実験によるパーキンサス原虫の病原性評価 未感染の人工アサリ種苗を、様々な濃度のパーキンサス原虫2種で個別に攻撃した後、給餌飼育し、その生残ならびにアサリ体内のパーキンサス原虫の栄養体の数を計数し、アサリに致死的な寄生強度を把握した。その結果Perkinsus olseniでは、アサリ種苗に致死的影響があり、アセリ栄養体密度が10^7cells/g軟体部重量になると死亡が始まった。一方、P.honshuensisについて、コントロールにも死亡が認めららたため、その病害性は明確にはならなかった。 (2)干潟におけるアサリ幼貝の減耗とパーキンサス原虫との関係評価 パーキンサス寄生強度の高い干潟(周防灘ならびに有明海)において、まず応募者が開発したPCR-RFLP法により生息するパーキンサスの種構成を把握した。その結果、どちらにおいてもP.olseniとP.honshusensisの両方が感染していることがわかった。また、有明海の干潟で毎月サンプリングを行いあさりにおけ幹線は、感染強度は多くの場合10^6cells/g軟体部重量で、10^7cells/gを超えることはほとんどなかった。 (3)アサリの資源動向とパーキンサス原虫の感染状況調査 アサリの漁獲量は全国的には減少傾向にあるが、場所によって、漁獲量が継続的に減少した海域、年によって大きく変動はするものの継続的減少は見られない海域、あるいは漁獲量が増加した海域などが見られる。そこで、それらの海域におけるアサリ成貝のパーキンサスの感染レベルと構成種を調査し、漁獲量の変動との関係を比較した。その結果、大まかにはアサリ漁獲量の減少が著しい海域ではパーキンサスの寄生強度が高い傾向が認められた。しかし、パーキンサスの寄生強度は周囲の環境要因にかなり影響を受けており、一方、漁獲統計の分解精度が低く、漁獲統計とパーキンサスの感染強度での比較からみた解析は困難であることがわかった。
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