研究概要 |
本研究では,無菌充填・無菌包装された食品の微生物危害を誘起するパッケージ・シール部の細孔を振動法により検出する検査システムの開発を行うことを目的としている.本年度は計測系の開発を中心に実験的検討を行った.まず細孔の有無による動的振動特性に関する基礎データを収集するための動的振動特性測定装置の製作を行った.当初予定の動的粘弾性測定だけでなく,対象容器を拘束せずに一点加振したときの共振現象をレーザー振動計で測定できるように仕様変更した.50Hz以下では良好に測定できることが確認できた.対象としている無菌充填容器では100Hz程度までの動的振動特性が必要とされるため,次年度に向けて測定周波数の拡張が喫緊の課題である.さらに検査用加振式測定装置の試作にあたり,基礎データを得るためにプロトタイプの試作を行った.測定系は,加振部の動電型スピーカー,スピーカーの駆動とインピーダンス変化を測定する定電流駆動型アンプ内蔵の特注測定装置,駆動信号・振動データの送受信用のPCから構成される.パック表面をマイクロドリルで穿孔してシール不良の細孔を模擬した.測定の結果,100Hz以下に数個の共振ピークが観測された.同一パックでは,穿孔により第2,第3共振周波数が減少する傾向がみられた.検査後,パック内に微量の空気が混入していることから,共振周波数の減少は空気流入によるパック全体のみかけの弾性率低下によるものと考えられるが,これについては上記動的振動特性測定装置の周波数拡張が終わり次第,実測による確認が必要である.一方,空気量の流入が多すぎるとパック全体の重心位置が下方に移動し,弾性率が逆に増加する傾向が確認された.本検査システムの実現のためには,空気流入量の調整と共鳴周波数の試料間差異のキャンセル方法の解決が必要不可欠である.
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