研究概要 |
日本の漁業生産においては,沿岸における給餌型海面養殖の重要度が増している。しかし,給餌量の2~3割と言われる残餌や糞尿が大きな有機物負荷となり,種々の問題が発生している。この問題に対し,高品質,高収量を目指した生産物情報収集のための計測技術,環境保全のための対策,および消費者に対するトレーサビリティ情報の提供を行う必要がある。本研究では水槽内で遊泳中の生魚の体積(収量)ならびに寸法,色(品質)を計測する手法の開発を月的とし,環境にやさしく,最小の入力で最大の収益の得られる精密養魚システムを構築することが最終目標である。 本年は水中でヘルムホルツ共鳴を利用した体積計測が可能かどうかを調査するため,まず予備実験を行った。ヘルムホルツ共鳴理論では通常媒質を空気と想定しているが,海水中では媒質の体積弾性率が大きいため,空気中よりも周波数が高くなる.また,被測定物として想定している魚体の体積弾性率が水の体積弾性率に比較的近いため,体積変動に対する共鳴周波数の変動をできるだけ大きくするような共鳴器設計が必要となる.まず共鳴現象の確認のために,ガラス製の共鳴器を用い,打撃式およびスピーカー式で共鳴スペクトルの計測を行った.共鳴器はガラス製の壺型としたが共鳴現象が確認するととができなかったため,ウォーターリード用のスリットを有する共鳴器に設計変更し試作を行った.この共鳴器はステンレス製で,内容量573mL,ネック径32mm,ネック長70mmの壺型とし,ネック開口部を3.5mm×13.5mmのスリットをもつ板で閉塞し,そこに水流を導入するチューブを接続した.その結果,ガラス球の個数が増加するにつれて,つまり共鳴器内試料体積が増加するにつれて共鳴周波数が増加することが確認された.現段階では,気泡等によるピーク周波数の低下で誤差が多いが,これを低減させること,実際の生魚に対して実験を今後行う必要がある。
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