メタロチオネイン(MT)は重金属と結合し、それらの解毒を担うタンパク質であり、様々な重金属により発現が誘導される。その発現は、重金属と結合したMRE結合転写因子-1(MTF-1)が、MT遺伝子のプロモーターにある重金属応答配列(MRE)に結合することによって誘導される。現在、MT遺伝子発現をCd汚染などのバイオマーカーとして用いる試みが行われている。そこで本試験では、MT遺伝子発現調節を簡便に検出できるMT発現系プロモーターレポーターアッセイを応用し、飼料中の重金属検出を試みた。MT-I遺伝子のプロモーター下流にルシフェラーゼ遺伝子の翻訳領域を結合させたレポーター遺伝子(MT-luc)あるいはMT-Iプロモーターに存在するMREを4回タンデムに連結させたレポーター遺伝子(MRE4-luc)をHepG2細胞に導入した。また、MTF-1も併せて発現させた。培地中に、様々な濃度のCd、AsとZnを添加し、ルシフェラーゼ活性を検討した。MT-lucはMRE4-lucに比べ、Znに対する反応性は著しく高かった。また、MTF-1の過剰発現によってさらに反応性は向上し、用量反応も明瞭だったので、以降の試験はMTF-1の過剰発現下でMT-lucを用いた。この系におけるZn、As、Cdの検出下限は、それぞれ25μM、1.25μM、12.5nMであった。したがって、飼料中Zn濃度が50mg/kgならば2.85mg/kg以上のAs、0.55mg/kg以上のCdがZnの干渉なしに検出可能であることが示唆された。実際、基準値を上回ったイネホールクロップサイレージ中Cdが検出可能であった。
|