本年度は、主にウシ初乳中のsCD14の精製法、もしくは実用化を考慮したエンリッチ法の検討、および培養細胞を使用したin vitroでのウシ初乳中sCD14の効果の検証を行った。ウシ初乳中のsCD14を簡易に精製するためにイオン交換カラムを使用したが乳中のタンパク質の等電点が非常に類似しているため高度な精製は不可能であった。そこで特異的モノクローナル抗体を作製しアフィニティクロマトグラフィーによって精製を試みたところ、高純度のsCD14を得ることができた。 しかし、この方法は実用化には不向きであるため、簡便・安価な方法として硫酸アンモニウムによる分画をおこなった。これで調整したクルードなsCD14をヒト由来細胞Caco-2の培養に添加して効果を判定した。この時、sCD14に加えて相互作用をするTLRリガンドを加えた。その結果、炎症性サイトカインIL-8やIL-1α、IL-1βの発現がTLRリガンドのみを投与した細胞よりも有意に亢進した。 当初の予想通り、ウシ初乳中のsCD14が、ヒトの細胞でもTLRシグナリングを亢進する効果を持つことが示唆された。大量に確保が可能なウシ初乳中のsCD14を利用して、ウシ以外の動物の免疫賦活を行うことが期待できる結果となった。
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