本年度は、ニューロパチックペイン発生の分子基盤として、近年見出された侵害受容チャネル蛋白質であるTransient Receptor PotentialV1(TRPV1)チャネルに着目し、その活性調節メカニズムについて調べた。ヒスタミンは炎症やアレルギー時に肥満細胞から放出される炎症性メディエーターであり、生体に痒みや痛みを引き起こす。しかし、これまでヒスタミンによる発痛作用の発現機序は不明であった。本研究では知覚神経に特異的に発現している侵害受容体であるTRPV1チャネルに対して外因性に適用したヒスタミンの作用を細胞レベルで検討した。マウスより知覚神経細胞を分離・培養し、細胞内Ca濃度変化をFura2によるCaイメージングにより測定した。その結果、ヒスタミンは、内因性TRPV1活性化刺激である酸によるCa増加反応を可逆的に増大することを見出した。また、この反応はTRPV1遺伝子欠損マウスでは生じなかった。それ故、TRPV1チャネルはヒスタミン受容体シグナルにより制御を受ける疼痛関連タンパク質として機能することが示唆された。
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