研究概要 |
反芻動物の赤血球には、分子量約155,000の膜内在性糖タンパク質gp155が高発現している。さらにgp155はバフド3-アンキリンと複合体を形成し、膜骨格形成に関与することが示唆されている。私達は、gp155の実体がATPトランスポーターのひとつであるABCC4であることを明らかにしたが、その赤血球における存在意義は明らかではない。本研究では反芻動物赤血球におけるABCC4高発現の分子機序の解明を目的に、牛ABCC4遺伝子を単離し、その性状を培養細胞発現系において検討した。牛ゲノムデータベースの解析から、牛ABCC4遺伝子は重複しており、少なくともABCC4.1~4.4の4種類のアイソフォームの存在が推定された。このうちABCC4.1および4.4遺伝子を増幅単離した。ABCC4.1はヒトやマウスで同定されている分子と相同であるが、4.4は動物種間でよく保存されているC末端PDZドメイン結合モチーフを欠くなど、非典型的なABCC4類似分子をコードすることが明らかとなった。ABCC4.1、ならびに4.4をHEK293細胞に発現させると両者ともに細胞膜に局在するものの、4.4は糖鎖をもたない分子量127kDaの分子として合成された。牛骨髄細胞におけるmRNA発現量はABCC4.1が主体を占め、4.4はマイナーな成分であることが示唆された。以上の結果より、牛ABCC4遺伝子産物は少なくとも2種類の遺伝子重複産物を含み、それらがそれぞれの役割を担っているものと考えられた。
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