研究概要 |
動物は進化の過程で受精の戦略を特殊化させてきた。鳥類では射出された精子は卵管に存在する精子貯蔵管に一旦貯蔵され、生体内で長期間生存するとともに、この貯蔵管から再び放出され受精を成立さみるという特徴を有している。本研究は、この驚異的な仕組みの分子機構を解明することを目標にするとともに,この仕組みを応用して精子をインビトロで長期間生存させるための全く新しい発想に基づいた新規方法の開発を目指すものである。 インビボにおける精子貯蔵管からの精子の放出に及ぼす種々のホルモンの影響について調べたところ、交尾や人工授精によって一端精子貯蔵管に侵入し、運動を停止した精子は、プロゲステロンの刺激がきっかけとなって放出され、そのアンタゴニストによってこの現象は強く阻害されることが判明した。つまり、精子貯蔵管からの精子の放出にはステロイドホルモンであるプロゲステロンがシダナルになっていることが判明した。プロゲステロンは排卵の調節に関与し、排卵の数時間前に血中濃度が上昇することが知られており、精子の放出と排卵周期が同調して受精の確立を高めている可能性が考えられた。そこでウズラの雌性生殖器よりcDNAライブラリーを作成しプロゲスラロンの受容体のクローニングを試みた。その結果、プロゲステロン膜受容体α、β及びγの3種類の受容体の部分配列の取得に成功し、ウズラの精子貯蔵管にはそのうちβ受容体が発現していることが明らかとなった。
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